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相田 悠希 [ murmur records ]

2014年2月現在〈SAD rec.〉からリリースされている2枚の作品『TOKYO, THE MONOCHROME CITY』と『Five Transpositions』を聴いてもらえれば一目瞭然だとは思うが、DOVUASKIのマスタリングはつい広がりがちな100Hz以下の低音域を如何に絞ってクリアに鳴らすかに主眼が置かれている。

特に20Hz~40Hz付近という、聴覚上は殆ど聴こえないが音の説得力と存在感を作品に与える帯域のトリートメントが彼はとても優れていて、それは耳というよりも皮膚で感じ取る種類のもので、クラブ等の大きなスピーカー、又は高性能のスピーカーで再現すればする程、中でも電子音楽においては如実に違いが現れる。

これは日常的に多くの機材を取り扱って実際に現場でオペレートしているエンジニアとしての彼の経験から形成されたもので、その能力は疑いようがない。データのやり取りだけでマスタリング工程を終わらせる事が多くなっている現在、一緒にああだこうだと良いながら立ち会いにてマスタリングができる事はサウンドアーティストやミュージシャンにとってとても良い刺激と経験になるだろう。


BISK [ subrosa / shhhh / novel sounds ]

昨今において、エレクトロニックミュージックはとてもワイドレンジで音が鳴っている。可聴域を超えたレンジの音をどのようにドライヴするのか、が重要だ。僕自身も、とりわけダンスミュージックにおいては超高域からサブロー帯域までどのように動いているかを常に注意して聴いているが、その対極に位置するように思えるドローンのような静謐な電子音楽においても40Hz以下の超低域のトリートメントに意識的な作家は少なくない。

そうしたことからも、マスタリングスタジオに求めるものは僕の中では決まっている。「スタジオの特性に応じたバランスでワイドレンジを高解像度に鳴らせる環境」「それらを的確にトリートメントできる耳と経験」である。そして、今回立ち上がった〈SAD lab.〉 は、DOVUASKIの現場経験の豊富さや備えられたモニター環境・AD/DA環境に鑑みれば、当然これらの条件を満たしていることがわかる。

しかし、もうひとつ重要なことがある。それは「アーティストが依頼する音源の持つ音楽性に対する理解」である。ヒップホップやハウスといったダンスミュージックからドローン/アンビエントに至るまで極めて広範な音楽に造詣があり、自身も制作者あるいはレーベルオーナーとして精力的に活動している彼であれば、依頼者とエンジニアが「音楽的に」相互理解を得ながらマスタリングという工程を経て「音の最終形」を目指すことが可能だろう。


Tomas Phillips [ 12k / LINE / SAD rec. ]

Dobashi's mastering skills are expertly efficient and creative.
Most importantly, however, his work is thoughtful; the care with which
he addresses every component of a recording and includes the artist
in the process is absolutely first rate.

Dobashiのマスタリング技術は巧みで敏腕、創造的です。
しかし最も重要なことは、彼の仕事ぶりが「思慮深い」ということです。
楽曲に記録されたすべての要素、すなわちアーティストの製作過程そのものを注意深く理解して処理するその能力は、間違いなく一流と言えます。


tomotsugu nakamura [ kaicoo ]

〈SAD lab.〉でマスタリングに立ち会うことによって、ミュージシャンは、より視覚的に音をとらえることの重要性を理解することができるだろう。「包み込むような」「遠くでうねるような」そういった感覚を〈SAD lab.〉では体験できるし、またそれを具体的にどうしたいかを伝えながら、音像が変化してゆくのを観たり聴いたりできるのは実に楽しい。

教科書どおりの構成ではない楽曲において、たとえば40Hz-250Hzにあると思われた気持ちのよいベース音が、実は倍音にその存在を大きく依存していたりすることがあるが、DOVUASKIはそういった音像のトリックも見逃さずにきちんとトリートしてくれる。幅広い音楽ジャンルへの造詣に裏打ちされたマスタリングの手腕と、アーティストの特性を理解して仕事にのぞむ姿勢はとても頼もしく、作品に最後の輝きをあたえるマスタリングという行程をより意義あるものにしてくれる。